2024年6月定例会 前田千尋 こども誰でも通園制度関連予算への反対討論
◆前田千尋 議員
日本共産党を代表して、議案第68号、2024年度(令和6年度)那覇市一般会計補正予算(第2号)の内、こども誰でも通園制度関連予算に反対の立場から討論を行います。
保育行政は、すべての子供の育ちを応援するために、保育士の配置基準を抜本的に改善し、専用の保育室を確保し、親の就労にかかわらず公が責任を持つ保育施設に入れる体制をつくるべきです。
ところが、政府は、親の就労にかかわらず、すべてのこどもの育ちを応援する、このような看板を掲げて、こども誰でも通園制度を創設し、2026年度から全国での実施を目指しています。そして、本市では先駆けてモデル事業を実施する予算が今回の補正予算に提案されています。
家庭とは異なる経験の中で成長できる機会を保障する、在宅で子育てする保護者の孤立感や不安感の解消につながると政府は意義を強調します。
その中身は、親が就労しておらず保育所などに通っていない生後6か月から2歳の子供を対象に、月一定時間(当面10時間)までの利用枠の中で、時間単位で預けられるというものです。
政府は、現在の一時預かり事業が、保護者の立場の必要性に対応するものなのに対し、新制度は、こどもを中心に考えるものだとします。
子供も保護者も、保育の専門家や家族以外の人と交流しながら子育てできる環境の整備は重要で、多くの保護者の要求です。
しかし、提案されている誰でも通園制度はあまりにも看板倒れです。
利用は事業者との直接契約です。預ける園・曜日・時間を決めて定期的に利用する方式(1日5時間で月2回、1日2時間で週1回など)だけでなく、スマートフォンのアプリで空き状況を見てその都度、空いている園・時間にスマホから直接申し込む方式が考えられています。
政府は、柔軟に、簡単に、タイムリーに予約できることを新制度の利点として押し出し、できるだけ利便性を高めたシステムにするとします。
空きがあれば直前の予約も可能で、全国どこの事業所にも予約できます。実施場所は保育所、認定こども園などのほか、駅周辺など利便性の高い場所とされ、企業の参入が狙われています。
市町村が事業所を認可しますが、認可基準は緩く、必要な保育従事者のうち保育士は半分でよいとされています。乳幼児を事前の面談なしに保育士資格のない人がみることが可能な仕組みです。
制度の詳細は、昨年度から始まった試行的事業の状況を踏まえて検討するとされますが、つくろうとしている制度は政府が理念に掲げるようなものではありません。子供の安全が保てるのか強く危惧されます。
日本の保育士の配置基準は諸外国と比べて低く、保育士1人が見る子供の数が多すぎるのが現状です。そこに新たな子供が短時間、日替わりで来るとなれば現場の負担はさらに増えます。アレルギーや発達状況など必要な情報が把握されず、命にかかわる事故が起きかねません。慣れない環境に置かれる子供のストレスが懸念されます。
保育施設等における死亡事故は0歳児で46%、1歳児では31%で最も多くなっています。入園からの日数別では、入園から30日目までで34%と、預けはじめが非常に多くなっています。毎回違う施設に預けることが可能な自由利用は、重大事故のリスクに子供たちをさらすことになりかねません。
2022年には、本市で指導監督基準を満たさない認可外保育施設で行政の指導監督が十分に行われず乳児の痛ましい死亡事故が発生しています。
さらに、同制度は市町村による利用調整もありません。保護者が施設の空き状況を見て、自分で調べて直接施設に申し込む方式です。
保育をはじめとする他の子育て支援制度と比べても、市町村の関与が大きく後退し、保護者が保育サービスを購入するという、保育の市場化を推し進めようというものであり、到底認められません。
こども誰でも通園制度は、保育現場の負担が増え、保育士の職場環境が悪化し、きめ細かい目配りができなくデメリットがあります。
政府の検討会でも、子供を理解するには一定の時間がかかる、今通っている子供たちの保育に支障があってはならないと指摘をされています。
すべての子供の育ちを応援するには、保育士の配置基準を抜本的に改善し、専用の保育室を確保し、親の就労にかかわらず公が責任を持つ保育施設に入れる体制をつくるべきです。
今必要なことは、このようにデメリットの多い、こども誰でも通園制度ではなく、保育士の処遇を改善しながら配置基準をさらに抜本的に拡充し、すべての子供たちに質の高い保育を保障する施策を積極的に推進することです。
以上、議案第68号、2024年度(令和6年度)那覇市一般会計補正予算(第2号)の内、こども誰でも通園制度の関連予算を削除するべきとの反対討論といたします。
議員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。